脳には、各部位に決まった働きがあります。中でも人間には発達した大脳があります。大脳の働きには、感情、記憶、学習能力、思考、行為、注意力、認知言語などの働きと、これらを更に高次元で統合する機能があります。これらの働きを高次脳機能と呼びます。
高次脳機能に障害が起きた状態を、高次脳機能障害といいます。脳血管障害(脳卒中)、頭部外傷、感染症、中毒疾患、脳腫瘍、先天性脳疾患、心理的要因や低酸素脳症などによる脳の機能障害を起こす疾患が原因です。重症では自立した生活がまったくできなくなりますが、軽症では本人の自覚がなく、家族からも理解されにくい場合があります。
多動性注意障害(落ち着いた注意力の維持ができない)や学習障害と呼ばれる症状、自閉症、認知症(痴呆)なども高次脳機能障害に入ります。
障害が起きた脳の部位や範囲により症状はさまざまです。
学習困難や認知症(痴呆)。
情緒不安定ですぐ興奮したり沈んだりする。
注意力や集中力に欠け、課題遂行が困難。
話す、書く、読む、聞くなどの伝達能力の障害。
見えているのに、認識できない、人の表情が理解できない。
手足は動くのに、意図した動作や指示された行為が困難。
見えている空間の半分を認識できない。
ほかにもありますが、これらが複合してさまざまな生活の困難が生じます。
障害が起きた脳の機能は、治療による回復が困難です。
疾病による障害には原因疾患の治療と、再発予防が大切です。固定した障害に対しては、作業療法、言語療法などのリハビリを行い、日常生活に不便がないよう訓練します。
積極的な日常生活そのものが、もっとも大切な治療といえるかもしれません。
いずれにしても、家族や周囲の人の理解と応援が大切です。また、いまだ十分といえない社会的支援の充実が急務です。