みんなの健康講座
広報 はつかいち より HATSUKAICHI


平成16年12月1日号 No.970

アルコール依存症(精神症状を中心に)

廿日市支部 伊関 勝彦

古来、洋の東西を問わず、イスラム教圏を除いたほとんどの国で、アルコールになじむ風習があります。日本では、人口100人当たり2人に匹敵する240万人もの問題飲酒者がいて、社会問題になっています。米国では成人の7パーセントもアルコール依存症の人がいます。

1977年からWHO(世界保健機関)は「慢性アルコール中毒」を改め、「アルコール依存症」と「アルコール関連障害」に分けました。最近では「プレアルコホリック」という飲酒依存予備軍の段階から、早期の予防・治療が必要とされています。

◆アルコール依存症とは

アルコール依存症は、自分の意志では、禁酒(抑制)不能状態で、過去一年間に、次の6項目のうち3項目以上が認められるものをいいます。

◆アルコールの危険性

アルコールは体内で分解されて、水とアセトアルデヒドという脳細胞にとっての神経毒に変わります。この代謝を助ける酵素活性を日本人の4割の人が欠損していて、「アルコール不耐性」といわれます。

肝臓が解毒できる日本酒量は1日7勺ですから、2合飲めば、2日間は「休肝日」が必要です。

またわが国に18パーセントも存在するといわれる妊婦の飲酒は、胎児性アルコール症候群や胎児奇形などの危険性があります。未成年では、飲酒量に比例して死亡率が増加し、飲酒開始年令が低いほど依存症になる割合が高くなります。覚醒剤など違法薬物乱用の入り口にもなります。

「急性アルコール中毒」では、単純(尋常)酩酊と、不耐性の人がなりやすい異常酩酊がみられます。異常酩酊には、複雑と病的とがあります。複雑酩酊は俗にいう「酒乱」で、酩酊中の記憶は保たれています。病的酩酊は、さらにもうろう型とせん妄型に分かれます。もうろう型では酩酊中の記憶は無く、せん妄型では興奮や幻覚を起こします。

「アルコール精神病」の多くは酒が断たれて離脱症候群が起きるとみられます。小離脱(早期症候群)は離脱後20時間でピークとなり、大離脱(後期症候群)は離脱後3~4日に出現します。

◆病気だという自覚を持って

治療法は、断酒会や家族を含む集団療法などで、意志の弱さを治す方法もあります。病気だという自覚がないと、酒に飲まれて専門病院に出たり入ったり、入退院を繰り返したり し、「回転ドア」と例えられるほどです。嫌悪療法としての抗酒薬を飲めば断酒できますが、薬をとばし酒のほうを飲んでしまうのが「依存症」のもろさです。