みんなの健康講座
広報 はつかいち より HATSUKAICHI


平成16年2月1日号 No.953

喫煙者がかかりやすい肺気腫

佐伯地区医師会 廿日市支部 玉川 孝太郎

◆肺気腫とは

肺は空気から酸素を取り入れ、逆に体内で生じた二酸化炭素を体外に排出するための臓器です。酸素と二酸化炭素を入れ換える(ガス交換)ためには表面積が大きいほど効率がよいので、肺は肺胞という小さな空気の部屋が3億個以上も集まった、きめの細かなスポンジのような構造をしています。肺胞の壁は弾力性が失われると壊れて、隣り合う肺胞同士が合わさり空気の部屋が大きくなってしまいます。表面積が減ることにより、ガス交換の効率は低下します。肺全体の弾力性も低下するため肺に空気は入ってきても十分に 吐き出せなくなってしまいます。「腫」という字は、「はれる・ふくれる」という意味をもっていますが、肺気腫という病名は肺が空気によって膨れている状態を表したものです。

◆症状

せきやたんが出る、階段の上り下りの際に息切れがするなどの症状が慢性的に、あるいは繰り返して起こります。ありふれた症状であるため、風邪やぜん息など、ほかの病気と間違われることが多いのが問題です。

病気が進むと平地を歩くときも息が切れるようになり、着替えやトイレなどの日常動作にも支障をきたすようになります。慢性的な酸素不足のため心臓や胃などほかの臓器にも負担がかかるようになり、息苦しさのため運動量が減り、筋力が低下し、体力が全般的に低下していきます。

◆原因

肺気腫は喫煙量の多い人ほどかかりやすく、患者の90パーセント以上は喫煙者です。1日に吸う本数が多いほど、また喫煙している年数が長いほど肺気腫の進行は早くなります。

喫煙者の周囲にいる人は、喫煙しているのと同じかそれ以上に有害物質を吸い込むことになるため、家族に喫煙量が多い人がいる場合や、たばこの煙で汚染された職場で長年仕事をしている場合、非喫煙者であっても肺気腫になる可能性があります。

喫煙以外にも、大気汚染や職業的な塵埃や化学物質も刺激になります。鉱山や建築現場、化学工場、牧場、ペットショップなどで働いている人は要注意です。

◆診断

症状、喫煙歴、職業歴などの問診と、胸部レントゲン写真、肺機能検査、動脈血ガス分析などの検査によって診断されます。胸部CT検査は非常に有用で、病気の初期でも、肺胞が破壊されている状態をとらえることが可能です。

◆治療

残念ながら破壊された肺胞を元に戻すことは不可能です。治療は肺胞の破壊を進行しないようにして、呼吸機能と体力の低下を食い止めることを目的とします。息苦しさを軽減するため気管支拡張剤や去たん剤なども投与されます。病気がすでに進行して酸素不足になっている場合は、酸素を補給するため在宅酸素療法を必要とする場合もあります。

治療の大前提として、まず禁煙です。たばこを吸い続ける限りこの病気はどんどん悪化していきます。

◆禁煙のために

喫煙には精神的な依存とニコチンに対する身体的な依存があります。禁煙に挑戦しても結局やめられない人は身体的な依存が原因の場合が多いので、ニコチンガムやニコチンパッチを使用するのも禁煙の一つの方法です。