風邪はよくある感染症ですが、その原因の8から9割はウイルスです。人には、風邪の感染を防ぐ機構が備わっています。
のどにはへんとう腺というリンパ球が集まった組織があり、病原体の侵入に対して、待機しています。風邪のとき、のどが赤くはれるのは、リンパ球が活躍している証拠です。
まず鼻毛で大きな異物を防ぎます。小さな異物は、鼻の奥の、ひだで面積の広くなった狭い通路の壁に吸着されます。このとき、空気は加湿加温され、高温多湿に弱いウイルスの侵入を防ぎます。
これは肺への空気を通す管のことです。内側には腺毛と呼ばれる毛が並んでいて、腺毛の動きで微生物やたんが外へ送り出されます。寒さや疲労で腺毛の働きが悪くなると、感染を起こしやすくなります。風邪で体温が上昇すると腺毛運動が活発になり、微生物を追い出す働きが増します。
肺は、肺胞と呼ばれる小さな袋の集まりです。マクロファ-ジという細胞が侵入してきた微生物を食べて消化し、この微生物の情報を抗体を作る細胞に知らせ、発熱中枢を刺激し、体温を上げるよう指示します。
左の図のように、病原体(ウイルス)の強さと防御力の力関係で、病原体の強さが防御力を上回ると風邪にかかります。Aの向きになれば(病原体が強ければ強いほど、防御力が弱ければ弱いほど)こじれていき、Bの向きになれば回復します。防御力の弱い幼少児、高齢者、妊婦、過労の人、病気をもっている人は風邪をこじらせやすいのです。こじらせれば中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎、髄膜炎、脳炎、心筋炎などの合併症を起こします。ぜんそく、肺疾患、心疾患、糖尿病などは症状が悪化します。
まずは風邪をひかないように、またひいてしまったら、こじらせないように次のことに注意しましょう。
うがいは、口やのどに付いたウイルスや細菌を洗い流し減少させます。ヨ-ド剤を含んだうがい薬なら、ウイルスや細菌を殺す作用があるので、なお良いでしょう。
風邪をひいている人が、ウイルスの着いた手でつかんだドアのノブなどをほかの人が触り、その手で鼻をこすると鼻にウイルスが感染します。手荒いをすることで、ウイルスを減少させることができます。石けんで洗うとなお効果的です。
過労を避け、十分な睡眠と栄養バランスの良い食事をとりましょう。
冷えたり冷たい空気を吸ったりすると、鼻やのどの粘膜の血管が収縮し腺毛の働きが悪くなります。
乾いた空気はウイルスを元気にし、気道の粘膜に障害を起こします。
以上のことに気をつけて、風邪を乗り切りましょう。