みんなの健康講座
広報 はつかいち より HATSUKAICHI


平成15年10月1日号 No.945

うつ病は必ず治る病気です

佐伯地区医師会 廿日市支部 末田 格

◆うつ病を治すコツ

うつ病は早期に専門医にかかり、「休養と服薬」という原則をしっかりと守れば必ず治る病気です。

「うつ病は心の風邪」といわれますが、これは風邪のように、休養をとり、きちんと治療すれば治る、ということを言っているのです。

現在では比較的短期間にうつ病の症状を改善する薬が開発されており、中でも最近使用されるようになったSSRIという種類の抗うつ薬は、副作用が少なく安心して飲める薬です。このような抗うつ薬を服用し、しっかり休養をとることで、平均16週間で8割の人が治っています。

しかし「風邪は万病の元」とも言われるように、うつ病をこじらせると長引いたり、再発を繰り返したり、自殺という取り返しのつかない結果を招くことがあります。そのようなことを避け、うつ病を治すコツは、「休養と服薬」に尽きます。

◆うつ病の症状

うつ病は、いつも憂うつで意欲がなくなり、考えることも何かをする気力もなく、小さなことをくよくよ悩み、「自分はまったく価値のない人間だ」と思い込んでしまう状態が何週間も何か月も続く病気です。

また、心の症状だけでなく身体にも多くの症状が出ます。体がだるい、疲れやすい、眠れない、食欲がない、頭痛や身体のあちこちが痛む、便秘するなどの不調があり、どうしようもないくらい具合が悪いのに「どこも悪くない」と言われたときは、うつ病の可能性が高いといえます。

◆うつ病の原因と治療

うつ病は脳の病気です。うつ病の原因は、脳の神経細胞の働きに関与する化学物質(神経伝達物質)が一時的に足りない状態になるためであることが、ほぼ解明されています。車に例えれば、ガソリン切れとオイル切れが同時に来た状態です。

「休養」がガソリンの給油、「抗うつ薬」はオイルと考えてください。抗うつ薬を服用すれば、エンジンは動き始めます。しかしガソリンの給油にはもっと時間がかかるので、すぐに車を走らせるとたちまちエンストしてしまいます。また、抗うつ薬を早くやめてしまうと、オイルが足りなくなってエンジンは再び焼き付いてしまいます。完全に治れば給油とオイルの循環は自動的にできるようになるのですが、本当に走っても大丈夫な状態になるまで「休養と服薬」を続けることが重要なのです。

◆うつ病をこじらせないために

うつ病になる人は責任感の強い人が多く、少し良くなったら迷惑をかけまいと考えて元の生活に戻り、無理をして再発することがあります。

うつ病には治っているかどうかを判定する検査法はまだありません。それを見極めるの精神科の専門医の役割です。再発予防や自殺防止も精神科医の重要な仕事ですが、わたしは最初の診察のとき、患者さんに対して、「脳の病気」と割り切って薬を飲んで休み、元気が出るのを待つようにすすめ、次のように言っています。「うつ病は必ず治ります。仕事は休み、したくないことはせず、会いたくない人には会わず、睡眠を十分にとってください。薬をきちんと飲めば2、3週間で元気が出てきます。最低4か月は薬を続けてください。死んだ方がいいと思っても、決して死なないでください。繰り返しますが、うつ病は必ず治ります」