みんなの健康講座
広報 はつかいち より HATSUKAICHI


平成15年8月1日号 No.941

正しい耳の手入れ法

佐伯地区医師会 廿日市支部 小田 道夫

耳垢はたまりやすい人とたまりにくい人があり、たまりやすい人は、生理的に分泌が盛んな人です。耳垢の型によっても違いが出てきます。外耳道にある分泌線には、耳垢腺、皮脂腺そして汗腺などがあります。外耳道の汗腺は、黄色透明な水溶液を分泌し、ほこり、昆虫などが外耳道へ異物として侵入するのを防ぐようになっています。

耳垢は、これらの腺の分泌物に、はがれ落ちた角化表皮細胞などが混じりあって乾燥している乾型とアメミミと呼ばれる湿った耳垢(湿型)の2種類の型があります。

乾型と湿型の違いは、耳垢腺から出る分泌物の性状の個体差、あるいは個人の体質によるものです。

◆耳垢の役割

耳垢の役割としては、① 外耳道の洗浄作用、② 耳垢腺から分泌される濃度の高い脂質による潤滑作用と外耳道の乾燥防止、③ 感染防御作用があります。

◆耳垢の自浄作用

外耳道の皮膚は、いつも新陳代謝を繰り返していますから、自浄作用によってごみや耳垢を奥の方からベルトコンベアー式に外の方に向かって出しています。そのために、あまり耳掃除をし過ぎると、その自浄機能を妨げることになり、かえって、耳垢がたまりやすくなったり、外耳道炎を誘因したります。

◆耳垢除去の方法

耳垢の除去は、市販の綿棒でぬぐい取る程度でよく、綿棒で除去できないところを軽く耳かきで除去したらよいのです。基本的には、耳かきを使う必要はありません。入浴後に、綿棒やタオルで軽くふく程度で比較的容易に耳垢を除去することができます。

幼少児は、自分で耳掃除をしないので、耳垢を奥の方に押し込むことがあまりなく、外耳道の外3分の1くらいのところに塊となってとまっていることが多いのです。したがって、塊ごと除去することができますが、痛がったり、泣き叫んだりして除去できない場合は、耳垢水を外耳道に注入して耳垢の塊を柔らかくしてから除去します。

◆耳垢塞栓

自浄作用によって耳垢は、通常、自然に排出されますが、排出されないで次第に大きくなって外耳道をふさぐようになると「耳垢塞栓」と呼ばれる状態になります。日本人は耳掃除をよくしますので耳垢塞栓は、あまり多くないのですが、寝たきりのお年寄りなどが、何年にもわたって耳掃除をしないために起こることがあります。耳垢塞栓は、湿型の耳垢の人に多く見られます。

耳垢が少しくらいたまっても、かゆみや痛みなどの症状がありませんので、外耳道が完全に閉塞して耳垢塞栓という形になって初めて外耳疾患の一つになり、難聴や軽い耳鳴り、そして耳閉塞感を訴えるようになります。

外耳道塞栓の状態になると、自分ではとても除去できませんので必ず耳鼻咽喉科医を受診して除去してもらってください。

◆定期的に耳垢除去を

耳垢があまりたまらないように、日ごろから外耳道内の耳垢を綿棒でふき去ることを心がけましょう。自分で耳垢が除去しきれないときには、年1回くらい定期的に耳鼻咽喉科医を受診して除去してもらうことが必要です 。