みんなの健康講座
広報 はつかいち より HATSUKAICHI


平成15年2月1日号 No.929

これ以上進行させない糖尿病

佐伯地区医師会 廿日市支部 石橋 不可止

◆糖尿病とは

糖尿病とは持続的に血液中のブドウ糖濃度(血糖)が高い状態をいい、尿糖は何ら糖尿病の本質を反映しません。健常者では血液100cc中の血糖値が90から100ミリグラムになるとすい臓からインスリンが出始め、150ミリグラムで最高に達するので血糖は90から150ミリグラムに維持されます。空腹時血糖が126ミリグラム以上か、食後2時間血糖が200ミリグラム以上だと糖尿病の可能性が高いのですが、1回の血糖検査で診断は確定できません。

1か月の平均血糖値を表すヘモグロビンA1c(正常は5パーセント以下)が6.5パーセント以上あれば1回の検査で糖尿病と診断できます。

高い血糖値が持続すると、網膜症、腎症、神経症、動脈硬化症などの血管合併症をおこして、失明、血液透析、足の切断、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な事態に至ります。早期に診断し、肥満することなく、ヘモグロビンA1cを6.5から7パーセント以下に維持すれば、これらの重大な合併症を予防できます。

◆糖尿病にはなぜなるの

糖尿病は遺伝と生活習慣によって発症します。遺伝とは主としてインスリン分泌能力の低下ですが、仮に糖尿病の遺伝があっても適切な生活習慣を維持すれば発症することはありません。

糖尿病を発症させる生活習慣は脂肪の食べ過ぎと運動不足です。わが国の定期的調査は、全年齢層における運動量の低下と脂肪、特に動物性脂肪の摂りすぎを指摘しています。摂取エネルギー自体は増えていませんが、運動量が低下しているため、男性では20歳代後半から、女性では中年以後の肥満が増加しており、これが糖尿病増加の大きな原因となっています。すなわち、脂肪を中心とした食べ過ぎが糖尿病を増加させ、いったん糖尿病を発症すると治療を困難にしている大きな原因なのです。

◆なぜ食べ過ぎるのか

理由は2つあります。第1に学校および社会人を対象とした生涯教育で、各個人が自分は健康を維持するために、いつ何をどれだけ食べるべきか判断する能力が育成されていないことです。学校給食がもはや家庭で不足する栄養を補う時代はとうに過ぎました。給食はこの能力(選食)を養う機会とすべきで、行政の理解不足を指摘したい。

次に、現在の国民の食生活を左右しているのがテレビのワイドショー的健康番組です。テレビは商業主義の権化であり、国民のためにではなくスポンサーのために番組を作っているのです。すなわち、食品を売るために!

特定の食品の特徴をことさら強調して食べるように勧めることをフードファディズムといいます。典型的な劣悪番組である「昼から元気の出る○○テレビ」で、たまねぎが血糖を下げるという放送をすると、たまねぎが大量に売れました。確かにたまねぎにはS-メチルスルホキシドという血糖降下作用を持った物質が含まれていますが、たまねぎを体重1キログラムあたり1キログラム食べなければ血糖は全く下がりません。あなたは食べられますか?

糖尿病の進行を食い止める唯一の方法は一生にわたって、脂肪の食べ過ぎを防ぎ、運動の習慣を維持することです。