みんなの健康講座
広報 はつかいち より HATSUKAICHI


平成14年9月1日号 No.919

救命(いのち)のリレー

佐伯地区医師会 廿日市支部 狹田 純

皆さんは救急法を知っていますか。救急法とは、負傷者や急病人を正しく救助して、救急隊員から医師・医療機関に引き継ぐまでの応急手当のことです。

死に直面している人の救助は初期治療がとても大切です。事故や急病の場合、救急車が駆けつけるまでに一般市民が協力して初期治療をする必要があるのです。

それでは実際にはどうすればよいのでしょうか。まず、行動する勇気をもってください。恥ずかしがったり、見て見ぬ振りをしたりしていては、助かるはずの命が失われます。けがをした人、顔色の悪い人を見たら、勇気をもって声を掛けてください。

救急法は、救命処置と応急処置の2つに分かれます。救命処置は、死に直面している傷病者の命を救うために行われる一連の行動です。救急処置は、症状の悪化を防いだり痛みや苦しみを和らげたりする処置のことです。ここでは救命処置について話を進めます。

死に直面しているかどうかを判断するには、次の4点を観察します。①意識はあるか、②息をしているか、③脈は触れるか、④大出血はないか。これらの一つでもあれば、すぐ救急車を要請すると同時に究明処置に入ります。

まず、だれでもできる出血の対処を確実に覚えてください。出血している所をやや広めに直接押さえます。できるだけ自分の手が汚れないように、出血点にガーゼを当てぽり袋などを利用します。傷が開いていて出血点が分からないときは、ガーゼを詰め込んで押さえます。ガーゼが無ければハンカチ、タオル、下着などなんでも使います。

人工呼吸は、鼻、口、のど、気管が詰まっていてはできません。意識が無ければかまれる心配はないので、口腔内の吐物などを指でかき出します。液状物のときには、ややうつ伏せにして流れ出すようにします。仰向けでは舌がのどに落ち込むので、首の骨が折れていなければ、頭を後ろにのけぞらせます。首の骨が傷んでいる可能性があれば、首の安静が一番になります。この場合は、下あごを受け口になるように引き出します。後はマウスツーマウスといって、傷病者の鼻をつまんで空気が漏れないようにして口を密着させ、口からのどに空気を吹き込みながら、胸の上がり具合を見ます。口を密着できないときは、うつ伏せにして、5秒に1回ぐらいで胸全体を押して空気を出し、両腕を引き上げて空気を入れる方法を取ります。

脈が触れない場合、また反応がない場合は心停止と判断して、心臓マッサージを開始します。硬い床、板などに仰向けに寝かせます。身体の下が柔らかいと、押しても心臓から血液が押し出されません。押す場所は、胸骨下端から4分の1上方、または、胸骨下端に中指を掛け、そろえた人さし指に反対の手の親指の付け根をそろえた位置です。上から胸に垂直にこぶし半分押し下げます。複数でするときは、心臓マッサージをする人が回数を数えます。1分間に60から100回押し、1分ごとに観察します。

さて、病気やけがの予防が最も大切であることは言うまでもありませんが、万一に備え、日ごろから救急そ生ができるよう正しい知識と技術を持つことが大切です。講習会などで、ぜひ一度練習をしてください。そして救急隊、さらに医療機関に引き継ぐまで絶対に死なせないこと。この「救急(いのち)のリレー」に先頭走者として勇気をもって参加してください。