みんなの健康講座
広報 はつかいち より HATSUKAICHI


平成14年2月1日号 No.905

アレルギー性鼻炎

佐伯地区医師会 廿日市支部 小田 道夫

風邪をひいていないのに鼻が詰まる、鼻水がよく出る、くしゃみを連発する、これらの3つの症状がそろえばアレルギー性鼻炎と考えてよいでしょう。風邪と異なるのは、発熱がない、鼻水に粘り気がないということです。そのほかに、臭覚障害、頭重感、けん怠感を伴い、細菌の感染を起こしやすいことです。

アレルギーを起こす原因となる物質を抗原(アレルゲン)といい、アレルギー体質の人にたびたび侵入すると体内で抗体が作られ、新たに抗原が入ってくると抗体と反応してヒスタミンなどの化学物質が放出されます。これがアレルギー症状を起こすのです。このヒスタミンが、粘膜の血管の透過性を高めて浮しゅを起こさせたり鼻水をたくさん出したりします。鼻汁の中に良酸球が増えてきて、これがアレルギー性鼻炎の一つの指標になっています。

アレルギー性鼻炎には、一年を通して症状が起こる「通年性」のものと、ある時期だけが起こる「季節性」のものがあります。通年性アレルギー性鼻炎のアレルゲンは、はうすだすと(室内ちり)が最も代表的です。ハウスダストの中には、寝具や衣類から出る動物性あるいは植物性の細かな繊維、かびの胞子、ペットがいればその体毛やふけなどが見られます。ハウスダストの中で問題になるのは、肉眼ではほとんど見えない粉のように小さなダニです。ダニの死がいや排泄物が呼吸の際、鼻粘膜に触れて発作を起こします。

季節性アレルギー性鼻炎は、主に花粉が原因となります。わが国では、スギやイネ科植物、ブタクサ、ヨモギなどです。これは、鼻炎と同時に結膜炎を起こし症状も激しく、花粉の種類により症状の出やすい時期が違います。早春はスギ、ヒノキなどの花粉症、初夏から秋にかけてはイネ科の花粉症、ブタクサ、ヨモギなどの花粉症が多くなります。

そのほか、血管運動性鼻炎といって、寒暖の差や過剰なストレスなどが引き金になって起こるものがあります。これは自律神経の一つである副交感神経が鼻粘膜で過剰に反応するためと考えられています。

次に治療法ですが、基本は抗原(アレルゲン)を取り除くことです。抗原の除去のほかに、減感作療法、薬物療法、手術療法があります。その中の薬物療法についてみると、化学伝達物質の働きを抑える抗ヒスタミン薬、鼻づまりを改善する抗ロイコトリエン薬、気感収縮薬抗コリン薬を使うことがあります。重症の場合は、局所ステロイド薬を鼻粘膜に噴霧します。また花粉症には抗アレルギー薬予防的、治療的に用います。

通年性アレルギー性鼻炎の予防として室内の抗原を除去するためには、細かいフィルターを備えた掃除機で毎日こまめに掃除をし、ダニの生息しやすいじゅうたんを使わないことです。また、空気清浄機を利用するとよいでしょう。

花粉症の人は、外出用マスク、眼鏡を着用します。帰宅時、玄関先で衣服をよくはたいて抗原をしつないに持ち込まないようにします。さらにうがいと洗顔をして抗原をよく洗い落とします。そのほか、風邪をひかないようにすること。規則的な生活を送り、過労や睡眠不足を避けましょう。また、ストレスを発散させることも大切です。

アレルギー性鼻炎は、じんましんや気管支ぜん息のようなほかのアレルギー疾患を合併しがちで、一種の文明病とされています。